人件費が上がる時代、マンション管理をどう持続させるか
最低賃金は6年で約3割上昇。いま考えたい管理品質とコストのバランス
ここ数年、3%を超える最低賃金の引上げが続いています。
特に2025年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,055円から1,121円へ66円、6.3%上昇しました。これは過去最大の引上げ額で、初めてすべての都道府県で最低賃金が1,000円を超えましたが、さらに2026年度についても、中央最低賃金審議会は、2026年7月28日、都道府県ごとの引上げ額の目安を54~56円とする答申をまとめました。
仮に目安どおりに引き上げられた場合、全国加重平均は1,176円、前年比55円・4.9%の上昇となり、6年連続で3%を超える引き上げ、2020年年度の902円を基準にすると、6年間で約3割上昇することになります。
この変化は、マンション管理とも無関係ではなく、
マンション管理業協会は、管理員をはじめとするさまざまな職種で人手不足と賃金上昇が続き、管理に要するコストの上昇は今後も継続することが見込まれるとの認識を示しています。
では、管理組合はこれから増える可能性のある「管理委託費の値上げ」「管理コストの増加」と、どのように向き合えばよいのでしょうか。

1.マンション管理は、人によって支えられている
マンション管理では、さまざまな人が日常の管理を支えています。
管理員、清掃員、フロント担当者、会計担当者、設備点検に携わるスタッフなど、管理の多くには人的な業務が伴います。
特に管理員業務や清掃業務は、現地で一定の時間、人が業務を行うことによって成り立つ部分が大きく、人件費の変化を受けやすい業務といえます。
マンション管理業協会も以前から、最低賃金や各種経費の上昇が管理員に係る費用の上昇につながり、それが管理委託費や管理組合の負担増につながっていると指摘しています。
最低賃金が上がると、最低賃金で働いている人だけの給与を引き上げれば済むとは限りません。
最低賃金に近い賃金水準で働く人との賃金差を維持するため、その上の賃金帯についても見直しが必要になる場合があります。
さらに、人材を採用するためには、周辺企業や他業種との賃金競争もあります。
つまり、最低賃金の上昇は、マンション管理に必要な「人を確保するコスト」そのものに影響する可能性があります。
2.コスト増を「受け入れる・拒む」ではなく、「考える」きっかけに
ただし、人件費が上昇しているからといって、管理委託費の値上げをそのまま受け入れればよいということではありません。
管理委託費には、人件費だけではなく、システム費、事務費、通信費、交通費、保険、教育費、間接部門のコストなど、さまざまな費用が含まれており、また、同じ管理会社でも、
常駐管理員を配置しているマンションと、
巡回管理のマンション、
管理員勤務時間が長いマンションと短いマンション、
等、それぞれ、人件費上昇の影響は異なります。
そのため、管理会社から値上げの申し入れがあったときに「最低賃金が上がったから仕方ない」で終わらせる必要はありませんが、「管理組合も収支が厳しいので値上げは認めない」というスタンスも、長期的には望ましいとは言えません。
大切なのは、値上げの理由とその構造を確認し、管理組合が主体的に対応を考えていくことです。

3.管理委託費は「総額」ではなく「業務ごとの中身」を見る
例えば、年間600万円だった管理委託費を660万円にしたいという提案があったとします。
数字だけを見ると10%の値上げですが、管理組合が確認すべきなのは「10%は高いのか、安いのか」だけではありません。
『管理委託費のどの業務について、どのようなコストが上昇しているのか。』ここを見ることが重要です。
特に、人件費上昇の影響を受けやすい管理員・清掃業務と、会計・出納事務・システムなどの業務を分けて考えると、値上げの理由が見えやすくなります。
単に「人件費が上がったので値上げします」ではなく、できる限り値上げの根拠を確認し、管理組合として納得できる条件を準備することで、管理組合の選択肢が広がるとともに、合意形成が円滑になります。
4.必要な管理品質と、持続できるコストのバランスを考える
管理委託費を抑えることは重要ですが、「安さ」を優先しすぎると、必要な管理サービスを維持できなくなるリスクがあります。
人手不足や人件費の上昇が続く中では、管理員の勤務時間の短縮、人材確保の難化、担当者の交代増加、清掃や受付などのサービス水準低下につながる可能性があります。
一方で、現在のサービスをすべて維持するために、提示された値上げをそのまま受け入れることが最適とも限りません。
大切なのは、そのマンションに必要なサービス水準を整理し、管理組合として許容できるコストとのバランスを決めることです。
目指すべきは、最も安い管理ではなく、必要な管理品質を維持しながら、区分所有者が長期的に負担でき、合意形成が可能な「持続可能な金額」を設定することではないでしょうか。

5.IT・DXを活用し、管理品質を維持・向上する
人件費が上昇する中で、管理品質を維持していくためには、ITやDXを活用して業務そのものを効率化する視点も重要になります。
情報共有や各種申請、会計処理、支払承認、資料管理など、これまで人が行ってきた定型業務をデジタル化・仕組み化することで、業務負担やヒューマンエラーを減らしながら、より効率的な管理運営が可能になります。
ただし、DXの目的は単なる省人化ではありません。
ITに任せられる業務は仕組み化し、人は居住者への対応や判断、調整など「人にしかできない価値」に集中する。
人とITを適切に組み合わせることで、限られた人員やコストの中でも、サービス品質を維持し、さらに高めていくことが可能になります。
yacneeでは、こうした業務効率化と管理品質の向上を両立させることが、これからの持続可能なマンション管理につながると考えています。

★まとめ★
最低賃金や人件費の上昇が続く中、マンション管理に必要なコストも変化していきます。
ここで重要なのは、管理委託費の値上げを単に「受け入れるか、拒むか」で考えることではありません。
まず、何にどれだけのコストが掛かっているのかを確認し、そのマンションに必要な管理品質と、区分所有者が長期的に負担できる金額とのバランスを考えること。
そして、ITやDXによる業務効率化も取り入れながら、限られたコストの中で必要な管理品質を維持・向上できる仕組みをつくることが重要です。
これから求められるのは、最も安い管理ではなく、
必要なサービスを、無理なく、長く続けられる管理。
人とITそれぞれの強みを活かし、管理組合・管理会社・居住者が安心して関われる仕組みをつくることで、マンションの管理品質と資産価値を将来へつないでいく。
それが、yacneeが考える「持続可能なマンション管理」です。
yacneeマンション管理士