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専門家レポート

expert report

自主管理マンションの持続可能な運営とは

自治体の実態調査から考える、課題とこれからの選択肢

福岡市は2026年7月、市内の分譲マンション管理組合を対象とした「令和8年度マンション管理組合実態調査」を開始しました。

一次調査は7月1日から31日まで実施され、理事長名や連絡先などを確認します。その後、2026年10月ごろには、管理組合の運営状況を詳しく確認する二次調査が予定されています。

福岡市は、政令指定都市のなかでも共同住宅の割合が高く、今後もマンションの増加が見込まれており、今回の調査は、管理運営の実態を把握し、今後必要となる支援策を検討するための基礎資料として実施されるものです。

本レポートでは、自治体による実態調査の一例として前回の2021年度調査を振り返りながら、特に自主管理マンションが抱えやすい課題について考えます。

この5年間で深まった、自主管理マンションの「担い手」と「継続」の課題

2021年度の調査では、回答があった1,426管理組合のうち、マンション管理の一部または全部を外部へ委託している管理組合は93.8%、管理業務を委託していない管理組合は5.8%で、特に19戸以下の小規模マンションでは、管理業務を委託していない割合が13.4%となり、全体より高い結果が出ています。
小規模マンションでは、管理会社へ委託すると1戸当たりの管理委託費が高くなりやすいことや、管理会社側の受託条件に合わないことなどから、自主管理を選択しているケースも考えられます。

さらに、前回調査からの5年間で、管理業界の人手不足や人件費・物価の上昇は急速に進み、管理委託費の値上げや、管理会社による受託条件の見直しを受け、費用面や契約条件の問題から、結果として自主管理を選択せざるを得ない管理組合が増えている現状もあります。

その一方で、建物の老朽化と区分所有者・役員の高齢化も進んでおり、戸数が少ないマンションほど、理事会役員や会計業務を担える人材が限られるため、これまで自主管理を続けてきた管理組合のなかにも、業務負担の増加や後継者不足から、自主管理の限界を感じるケースが増えています。

自主管理を選ばざるを得ないが、自主管理を担う人も不足している。

費用を抑えやすく、管理組合の意思を反映しやすいという自主管理の利点と、限られた人へ業務と責任が集中しやすいという課題は、これまで以上に表裏一体になっています。

課題1 役員の高齢化・属人化となり手不足

前回調査で、管理組合運営における将来の不安として最も多く挙げられたのは、「区分所有者の高齢化」の58.6%でした。

続いて、次のような回答が見られました。

  • 建物の老朽化に伴う適切な維持修繕と費用の運用:43.2%
  • 役員のなり手不足:29.7%
  • 管理組合活動に無関心な所有者の増加:25.7%

理事の選任についても、29.8%が「苦労することがある」、6.5%が「かなり苦労しており、定数を満たすことが困難」と回答しています。

自主管理マンションでは、会計処理、書類作成、業者対応、総会準備などを役員自身が担っている場合が多く、長年同じ人が理事長や会計担当を続けることで、当面の運営は安定するかもしれません。

しかし、属人化した管理組合の運営は、次のような問題が表面化する可能性があります。

  • 会計処理の方法が分からない
  • 契約内容を把握している人がいない
  • 修繕履歴や業者との交渉経緯が分からない
  • 銀行口座や印鑑の管理方法が引き継がれていない
  • 総会資料の作成方法が分からない

自主管理における大きなリスクの一つは、管理が特定の人の知識、経験、責任感に依存してしまうことです。

課題2 出納・会計業務を誰が担うのか

前回調査では、組合会計の収入・支出の調定や予算案・決算案の作成を管理組合自身で行っている割合は8.4%、管理費等の収納、督促、支払い、帳簿管理などの出納業務を管理組合自身で行っている割合は7.4%でした。

自主管理マンションでは、役員や区分所有者が次のような業務を担っている場合があります。

  • 管理費・修繕積立金の入金確認
  • 請求書の内容確認
  • 取引先への支払い
  • 会計帳簿の作成
  • 月次収支の確認
  • 予算案・決算書の作成
  • 滞納者への督促
  • 通帳や印鑑の保管
  • 総会での会計報告

会計に詳しい人が担当している間は問題なく運営できても、役員交代によって同じ業務を担える人がいなくなる可能性があります。

また、一人の担当者が請求書を確認し、支払いを承認し、通帳と印鑑を管理している場合、本人に不正の意図がなくても、十分なチェック機能が働きません。

自主管理を長く続けるためには、最も重要かつ負担が大きい出納・会計業務を「信頼できる人に任せる」だけでなく、属人化しない体制を整えることが重要です。

課題3 書類と管理情報の引継ぎ

管理組合の運営には、会計帳簿や設計図書など、長期間保存すべき重要な資料があります。

前回調査では、総会議事録を「役員の自宅」で保管している管理組合が全体で5.8%ありました。19戸以下のマンションでは14.8%に上り、設計図書や構造設計書についても、役員の自宅で保管している割合は全体で3.5%、19戸以下では8.6%ありました。

役員の自宅での保管が直ちに問題になるわけではありません。しかし、紙の資料、個人のパソコン、USBメモリーなどに情報が分散していると、次のような問題が起こりやすくなります。

  • 資料の所在が分からない
  • どのデータが最新版か判断できない
  • パスワードが分からない
  • 個人情報が適切に削除されない
  • 過去の意思決定の経緯を確認できない
  • 役員の退任や転居によって資料が失われる

自主管理を持続させるには、管理情報を「その時の役員が持つもの」から、管理組合が継続的に保有する共有資産へ変えていく必要があります。

例えば、株式会社ネオスが提供するマンション管理ポータル「Class@CITY(クラッシー)」を活用すれば、規約、議事録、契約書、会計資料などをクラウド上で保存・共有し、役員交代時の円滑な引継ぎに役立てることができます。

Class@CITY(クラッシー) | マンション管理システム

課題4 相談相手と外部支援の不足

前回調査では、福岡市が実施するマンション管理セミナー、無料相談会、マンション管理士派遣、各種助成制度などについて、「一つも知らない」と回答した管理組合が59.2%に上り、管理業務を委託していない管理組合に限っても、55.4%が「一つも知らない」と回答しています。

その一方で、管理業務を委託していない管理組合が今後利用したい支援として、

  • 耐震診断・改修工事費助成:31.3%
  • マンション管理士派遣:20.5%
  • マンション管理相談会:19.3%
  • マンション管理の手引き・Q&A:19.3%

などがあり、自由記述でも、修繕や滞納対応への助言、専門家の派遣、相談先の案内、他のマンションの事例、管理委託費の適正価格などを求める意見が寄せられています。

自主管理は、すべての業務を自分たちだけで行うことと同義ではありません。

行政の相談制度、マンション管理士、建築士、会計・出納の実務支援、設備会社、クラウドシステムなどを適切に組み合わせることで、管理組合が主体となる運営を維持しながら、役員の負担を減らすことができます。

例えばyacneeの自主管理マンション向けサポートでは、専門家が管理組合に寄り添い、管理に関するコストや仕様を見直しながら、会計・出納業務や専門業者との直接契約を組み合わせた、管理会社への全面委託に代わる新しい選択肢を提案しています。

管理組合支援サービス | 株式会社yacnee

★まとめ★

自主管理マンションには、「管理組合のコストを抑えやすい」「管理組合の意思を運営に反映しやすい」「支出内容を把握しやすい」等のメリットがありますが、
その一方で、会計、出納、書類作成、滞納管理、修繕計画、契約確認などを、毎年交代する役員だけで担い続けることには限界があります。

自主管理を続けるために必要なのは、一部の区分所有者がこれまで以上に頑張ることではありません。

重要なのは、自主管理を続けるか、管理会社へ全面的に委託するかという二択で考えないこと。自主管理の良さを残しながら、負担の大きい業務だけを外部へ任せることができれば、特定の役員に依存しない、持続可能な管理体制に近づきます。

すべての管理業務を一括して任せるのではなく、現実的に自分達で何ができるかを整理し、管理組合が必要とする業務を選んで外部委託する選択肢を探ることが重要です。

今回の実態調査が、自主管理マンションに必要な支援を行政が検討する材料となるとともに、それぞれの管理組合が今後の管理方法を見直すきっかけになることが期待されます。

yacneeマンション管理士

※本記事は、2026年7月27日時点で公表されている福岡市の資料をもとに作成しています。