マンション管理会社の人手不足は今後さらに深刻化する
― 担い手不足が進む中で、管理品質をどう支えるか ―

労働人口の減少が指摘されるようになってから数年がたち、人材を取り巻く環境は大きく変化しました。なかでも、労働集約型産業であるマンション管理業界は、その影響を強く受けています。
マンション管理会社では、管理組合と管理会社の窓口となる「フロント担当者」が重要な役割を担っています。

フロント担当者の仕事は、管理組合の総会や理事会の運営支援だけではありません。居住者などから寄せられる日常的な要望への対応に加え、管理会社によっては、担当マンションに配置された管理員の労務管理も担います。さらに、営業担当として、管理委託費の改定交渉や、規模を問わず修繕工事などの受注に関わることもあります。
大手のマンション管理会社では、こうした業務が分業されていることも少なくありません。一方、中堅以下の会社では、フロント担当者が幅広い業務を一手に担うケースがあります。加えて、総会や理事会は土日や平日の夜間に開かれることが多いため、勤務時間が長くなりやすい職種です。
マンション管理の現場では、居住者や管理組合から厳しい要求を受ける場面もあり、フロント担当者がカスタマーハラスメントの対象となるケースもあります。
受託規模や会社の方針によって差はありますが、フロント担当者1人が8~15組合、合計600~800戸程度を受け持つケースが一般的です。
管理組合の役員を経験した方のなかには、フロント担当者からの返答が遅く、やきもきしたことがある方もいるでしょう。しかし、その背景には、複数の管理組合を同時に担当し、対応が追いつかないという構造的な問題があります。

こうした業務負担の大きさや勤務時間の不規則さは、ワークライフバランスを重視する求職者にとって、就職先を選ぶ際の懸念材料になり得ます。そのため、多くの管理会社が、若年層の採用と、採用後の定着・育成に苦労しています。
こうした状況を受け、働き方改革が進展して以降、各社は人材確保と定着に向けた取り組みを強化してきました。担当物件数の削減、業務の分業化、DXによる事務負担の軽減などを通じて、フロント担当者の働き方を見直しています。
一方、多くの管理会社では、即戦力を確保するため、経験者を中途採用する傾向があります。同じ業界内で転職を重ねるフロント担当者も少なくありません。よりよい待遇や労働環境を求めて人材が移動するため、管理会社には採用だけでなく、既存社員の定着に向けた取り組みも求められています。

本題に入ります。分譲マンションのストックは約720万戸、管理組合数は11万~12万組合といわれています。フロント担当者1人が平均10組合を受け持つと仮定すると、全国で必要な担当者は単純計算で約1万1,000~1万2,000人です。さらに、毎年約10万戸、約1,500組合が新たに加わるとすれば、既存担当者の退職や離職を考慮しなくても、年間約150人分の新たな対応力が必要になります。
冒頭で触れたとおり、労働人口は減少しており、フロント担当者の業務負担も、他の職種と比べてなお重い状況にあります。担当者の年齢構成を示すデータはありませんが、40代から50代が中心層とみられ、若年層の確保と定着が課題になっています。今後も新築マンションの供給によって管理対象が増える一方、現在の中心層が定年期を迎えれば、人材不足が一段と深刻化する可能性があります。

人手不足を補う手段として期待されるのがAIです。資料作成、議事録の整理、問い合わせ内容の分類など、理事会・総会運営に伴う事務作業の一部は、AIによって効率化できる可能性があります。一方、現地確認や居住者との調整など、人が現場で担う業務を全面的に代替することは困難です。したがって、AIの活用が進んでも、人材の確保と定着は引き続きマンション管理会社の重要な経営課題となります。
「カンリノミカタ」は、人手不足などを背景に管理会社への委託が難しくなったマンションに対し、経験豊富なマンション管理士がコンサルタントとして管理組合の運営を支援するサービスです。経験を積んだ人材が、希望する物件数を担当する仕組みを整えることで、新たな担い手の受け皿を目指します。さらに、DXを活用して情報共有と事務処理を効率化し、現地で必要となる対応はコンサルタントと居住者が協力して担います。こうした仕組みを通じて、管理組合の自主性を保ちながら、安心して長く暮らせるマンション環境の実現に貢献していきます。
執筆・監修|カンリノミカタ 専門コンサルタント
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