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専門家レポート

expert report

管理費滞納を放置するとどうなる?― 消滅時効5年と理事長の責任を判例から解説

1 管理費・修繕積立金の消滅時効は「5年」

マンションの管理組合が区分所有者(組合員)に対して有する管理費や修繕積立金の請求権は、支払期日の翌日から5年間行使しないと、消滅時効により請求できなくなります。

最高裁判所の判決によって「5年」であることが確立されているのです。

2 なぜ「5年」で時効になるのか?(最高裁判決による法的説明)

最高裁判所第二小法廷平成16年4月23日判決は、以下の理由から管理費等の消滅時効を「5年」と判断しました。

(1)定期的に発生する債権(定期給付債権・支分権)であるため

管理費や修繕積立金は、管理規約や総会決議で具体的な額が確定し、毎月定期的に支払われる性質をもちます。

法律上、基本となる契約・規約関係(定期金債権)に基づき一定期間ごとに発生する金銭債権(支分権)には、5年の消滅時効が適用されます(民法第166条1項)。

(2)金額が変動しても結論は変わらない

予算見直し等に伴い月額が改定されることがあっても、定期的に支払うという性質は変わらないため、5年の消滅時効が適用されます。

3 時効が完成する管理費等の単位は?

法律上、毎月発生する各月分の管理費等は、それぞれ「別個の独立した債権」として扱われます。

そのため時効のカウントは毎月の支払期日ごとに進みます

長期間連続して滞納されている場合でも、滞納全体がまとめてひとつの債権になるわけではありません。たとえば令和8年1月分の管理費等の時効は1月の支払期日の翌日から、2月分は2月の支払期日の翌日から、それぞれ個別に5年のカウントが進みます。

4 古い月分から順番に時効が完成

管理費等の滞納を放置し続けた場合、古い月分の債権から順次1か月ずつ時効消滅していくことになります。

5 滞納放置と時効完成における理事長の責任(善管注意義務違反)

管理費等の滞納を放置し、時効が完成して回収不能となった場合、理事長の責任が問われることがあります。東京地方裁判所令和4年9月30日判決では、以下のような判断が示されました。

(1)理事長が負う「善管注意義務」

理事長(管理者)は、区分所有法及び民法に基づき、管理組合に対して「善管注意義務(誠実に職務を遂行する義務)」を負っており、未収金を適切に回収・管理する責務があります。

(2)未収金の放置と引き継ぎ怠慢による賠償責任

東京地裁の事例では、元理事長が在任中に修繕積立金の未払いを長年放置し、退任時にも後任へ未収金情報を引き継ぎませんでした。その結果、支払期日の翌日から5年以上が経過して消滅時効が完成し、区分所有者から時効援用をされて約322万円が回収不能となりました。

裁判所は元理事長に「善管注意義務違反(債務不履行)」を認め、回収不能となった約322万円全額について、元理事長個人への損害賠償(補填責任)を命ずる判決を言い渡しました。

まとめ

滞納されている管理費等の請求権は5年で時効消滅します。

これを防ぐためには、早期の催告や法的措置が必要ですし、その前提として毎月の個別管理、特に月別の未収管理を徹底する必要があります。

理事長の管理責任が問われる可能性もありますので、放置や引き継ぎ不足のないよう、適切に対応してください。

執筆・監修 | 弁護士 土屋 賢司

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