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専門家レポート

expert report

マンション建替えはなぜ進まない?

合意形成で押さえるべき5つのポイント
~管理組合・理事会が知っておきたい建替え成功の鍵~

「マンションは老朽化しているのに、建替えの話がなかなか進まない。」
高経年マンションでは、このような悩みを抱える管理組合が少なくありません。
実際には、建替えを難しくしている最大の要因は建物そのものではなく、「人」と「合意形成」です。
区分所有者それぞれの立場や価値観、経済状況は異なります。そのため、建替えを進めるには、丁寧な情報共有と時間をかけた合意形成が欠かせません。
建替えの各段階で権利者やその家族がさまざまな判断を迫られ、組合や専門家が連携しながら合意形成を進めること重要です。
本レポートでは、マンション建替えが進まない理由と、管理組合が押さえておくべき5つのポイントを解説します。

1.建替えが進まない本当の理由

「建物が古いから建替えよう」一見するとシンプルな話に思えます。
しかし実際には、

  • 建替え費用
  • 将来の住まい
  • 仮住まい
  • 相続
  • 資産価値
  • 年齢
  • 家族構成

など、区分所有者一人ひとりが異なる事情を抱えています。
そのため、「建替えに賛成か反対か」という二択ではなく、
「将来どのような暮らしを望むのか」という視点から議論を進めることが重要になります。

建替えの必要性を判断する際には、「建替えありき」ではなく、大規模修繕や改修など他の再生手法とも比較しながら、マンション全体にとって最適な選択肢を検討することが重要です。

2.合意形成が難しい4つの背景

① 区分所有者の価値観が異なる

マンションには、

  • 長年住んでいる人
  • 最近購入した人
  • 賃貸に出している人
  • 相続した人

など、さまざまな立場の区分所有者がいます。

建替えに期待することも、それぞれ異なります。


② 高齢化

築年数が古いマンションでは、居住者の高齢化も進みます。

高齢の区分所有者にとっては、

  • 引越し
  • 仮住まい
  • ローン
  • 手続き

などが大きな負担となることがあります。国土交通省の調査では、築年数が古いマンションほど70歳以上の世帯主割合が高いことが示されており、「人の老い」が管理・再生の課題となっています。

また、高齢の区分所有者ほど、「仮住まい」「引越し」「荷物の整理」「新居探し」など、建替えそのものより生活面への不安が大きくなる傾向があります。こうした不安を丁寧に解消することが、合意形成を前進させる重要な要素となります。


③ 情報格差

建替え事業は専門用語が多く、

  • 権利変換
  • 等価交換
  • 建替え決議
  • 事業協力者

など、初めて聞く言葉も少なくありません。

理解度に差があると、不安や誤解が生まれやすくなります。


④ 将来への不安

建替えは完成まで数年を要することもあります。

「本当に最後まで進むのか」

「費用は増えないか」

「完成後に住み続けられるのか」

こうした不安が、合意形成を難しくする要因となります。

3.合意形成で押さえる5つのポイント

ポイント① 情報をオープンにする

建替えの検討状況や資料を一部の理事だけで管理すると、不信感が生まれます。

総会資料や議事録、検討状況を適切に共有することが、信頼につながります。

ポイント② 早い段階から説明を始める

建替え決議の直前だけ説明しても、十分な理解や納得は得られません。

検討初期から、

  • 現在の建物の課題
  • 修繕との比較
  • 建替えのメリット・デメリット
  • 想定スケジュール
  • 将来の資産価値

などを継続的に共有し、「検討状況を見える化」することが重要です。

説明会を一度開催して終わりではなく、検討段階に応じて繰り返し説明会を実施し、区分所有者が理解を深められる環境づくりが求められます。

ポイント③ アンケートや個別相談会を活用する

総会だけでは本音は見えません。

匿名アンケートや意向調査を行うことで、

住民の不安や要望を早期に把握できます。

また、アンケートだけではなく、

  • 個別面談
  • 小規模説明会
  • ワークショップ

なども有効です。

総会では発言しづらい区分所有者でも、個別面談であれば本音を話しやすくなります。また、ワークショップ形式で住民同士が意見交換を行うことで、お互いの立場への理解が深まり、合意形成が進みやすくなります。

ポイント④ 専門家を活用する

建替えは、

  • マンション管理士
  • 建築士
  • 弁護士
  • 税理士
  • 不動産コンサルタント

など、多くの専門家が関わる事業です。

理事会だけで抱え込まず、客観的な立場からの助言を受けることが、住民の安心感にもつながります。

建替えでは、専門家が「管理組合の代理」として結論を出すのではなく、客観的な立場から情報を整理し、区分所有者が納得して意思決定できる環境を整えることが重要です。

ポイント⑤ 「反対意見」も尊重し一人ひとりに寄り添う支援を行う

建替えでは反対意見が出るのは自然なことです。

重要なのは、反対者を説得することではなく、

「なぜ反対なのか」を理解することです。

費用への不安なのか、将来への不安なのか、情報不足なのか。

理由が分かれば、解決策を検討できる可能性があります。

例えば、

  • 仮住まい探し
  • 引越し
  • 資金計画
  • 名義変更
  • 相続相談
  • 荷物整理

など、個別の事情に応じたサポートを行うことで、不安が軽減され、建替えへの理解も深まります。

「全員に同じ説明をする」のではなく、「一人ひとりに合わせた支援」を行うことが、合意形成を成功へ導く重要なポイントです。

4.デジタル活用が合意形成を変える

近年では、管理組合運営にもデジタル化が進んでいます。

例えば、

  • 理事会資料のクラウド共有
  • 電子掲示板
  • Webアンケート
  • 電子議事録
  • 過去資料の検索
  • スマートフォンでの閲覧         

などを活用することで

「知らなかった」「資料をもらっていない」「説明を聞いていない」

といった情報格差を減らすことができます。

Class@CITY(クラッシー) | マンション管理システム

★まとめ★

マンション建替えが進まない理由は、建物の老朽化だけではありません。

本当に難しいのは、多様な価値観や生活環境を持つ区分所有者が、将来に向けて納得できる意思決定を行うことです。

そのためには、建替え決議の直前だけでなく、検討初期から継続的に情報を共有し、一人ひとりの不安や疑問に寄り添いながら信頼関係を築いていく「合意形成活動」が欠かせません。

管理組合には、「建替えを急いで決める」ことではなく、「誰もが納得できる議論ができる環境」を整えることが求められます。

マンション管理士をはじめとする専門家の知見と、デジタルツールによる情報共有を組み合わせることで、透明性の高い管理運営と円滑な合意形成が実現しやすくなります。

将来のマンションの価値を守るためにも、早い段階から準備を始め、区分所有者全員が安心して議論できる環境づくりを進めていきましょう。

yacneeマンション管理士