ナフサショックがマンション修繕に与える影響
~管理組合が知っておきたい現実と対策~
近年、マンションの大規模修繕工事では、資材価格の高騰や人手不足により、工事費の上昇が続いています。
さらに2026年に入り、中東情勢の緊迫化を背景に、ナフサ(石油化学製品の原料)の供給が不安定となり、防水材や塗料、シーリング材、塩化ビニル管など、マンション修繕に欠かせない建築資材の調達に大きな影響が出ています。
この状況は、建築業界では「ナフサショック」とも呼ばれ、見積価格の変動や納期遅延、大規模修繕工事の延期など、管理組合にも影響が広がっています。実際に、資材不足による工事遅延や費用増加、施工会社が見積提示をためらうというような状況が生じているのが現状です。
しかし、重要なのは必要以上に不安を抱くことではありません。
本レポートでは、ナフサショックの現状と管理組合として今取るべき対応について解説します。
1.ナフサショックとは
ナフサは、石油を精製する過程で生産される原料で、
・防水材
・外壁塗料
・シーリング材
・塩化ビニル管
・樹脂製建材
など、多くの建築資材に使用されており、
現在は国際情勢の影響などにより、このナフサ由来資材の流通が不安定になっています。
メーカーでは出荷制限、問屋では供給調整、施工会社では見積価格の保証が難しい状況となっており、これがマンション修繕工事へ大きく影響しています。

2.管理組合へどのような影響があるのか
■見積価格が変動しやすくなる
これまでは数か月間有効な見積書を提示できた工事でも、現在は資材価格の変動が大きく、 施工会社も将来の仕入価格を予測できません。
そのため、
・見積有効期限の短縮
・条件付き見積
・価格変動条項付き契約
などが増えています。
■工期が延びる可能性がある
資材が届かなければ、足場を設置しても工事を進めることができません。
その結果、
・足場設置期間の延長
・工事期間の長期化
・仮説費用の増加
なども発生する可能性があります。
■施工会社選定の考え方も変わる
これまでは、
「複数社から相見積を取得し、一番安い会社を選ぶ」
という方法が一般的でした。
しかし、現在は、
資材を安定して調達できる施工会社かどうかという視点も重要になっています。
メーカーや問屋との継続的な取引実績がある施工会社は、資材を確保しやすい場合があります。
マンション管理の現場では、価格だけでなく資材メーカーとのパイプや過去の取引実績を重視することも提案されています。

3.管理組合が今取るべき4つの対策
① 工事の優先順位を整理する
すべての工事を一度に実施するのではなく、
建物の安全性に直結する
・防水工事
・外壁補修
・漏水対策
などを優先的に検討しましょう。
建物の寿命や安全性に関わる工事を優先し、景観向上目的の工事は状況に応じて検討することを推奨します。
② 価格変動を前提に資金計画を立てる
現在は、
「契約時の価格が完成時まで変わらない」
とは限りません。
予備費の確保や資材価格変動への対応について、施工会社と十分に協議しておくことが重要です。
③ 施工会社と早めに相談する
着工直前ではなく、修繕計画の初期段階から施工会社へ相談することで、資材確保の見通しも立てやすくなります。
④ 実態以上に慌てない
現在の市場環境は確かに厳しい状況ですが、
最も避けるべきなのは、実態以上のパニックです。
「材料がなくなるかもしれない」という不安が過剰発注や売り控えを招き、流通の混乱をさらに悪化させる可能性があります。
重要なのは、
「工事ができない」ではなく、
「これまでとは進め方・注意するポイントを少し変える必要がある」
と理解することです。

★まとめ★
ナフサショックは、マンション修繕工事に少なからず影響を与えています。
しかし、それは「工事ができなくなる」ということではありません。
むしろ、これまでのように価格だけで施工会社を選ぶのではなく、資材調達力や施工実績、信頼関係も含めて総合的に判断する時代へ変化しているといえるでしょう。
管理組合には、こうした市場環境を正しく理解し、専門家と十分に情報共有しながら、現実的な修繕計画を立てていくことが求められます。
「実態以上に恐れず、しかし現状は正しく理解する」。
これが、ナフサショックの時代における管理組合の最も重要な姿勢ではないでしょうか。
yacneeマンション管理士