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専門家レポート

expert report

管理業者管理者方式で考えたい「外部監事」というガバナンス

「任せる管理」が広がるほど、問われるチェック機能

マンション管理の担い手が変わりつつあります。
多くのマンションでは、区分所有者の中から選ばれた理事長や理事会役員が管理組合の運営を担い、管理会社がその実務を支える「理事会方式」が一般的でした。
一方で、役員のなり手不足や区分所有者の高齢化、建物の高経年化、管理業務の専門化などを背景に、管理会社が「管理者」となって管理組合運営を担う「管理業者管理者方式」が選択肢として増えています。

管理会社がマンション管理の担い手になること自体は問題ではなく、区分所有者の負担を軽減し、安定した管理につながる可能性もあります。
しかし、ここで一つ重要な疑問が生まれます。

管理の実務と管理組合の代表である管理者の両方を管理会社に任せたとき、その管理が適切に行われていることを、誰がどのように確認するのでしょうか。

理事会方式のマンション管理を「意思決定」「執行」「監督」に分けて考えると分かりやすくなります。
総会が最終的な意思決定を行いますが、日常的な意思決定と執行は管理者等(理事長または理事会)が行い、管理の実務を行う管理会社の監督も管理者等の役割になっています。さらに管理者等の判断や管理業務、財産の状況を監督するのが監事の役割になっているという構造です。

管理の担い手が変わる(管理会社が管理者となる)のであれば、これまで以上に監事の重要性が高くなる為、チェックする仕組みも合わせて見直す必要があります。

法令・制度も「チェックできる管理」へ

こうした管理方式の変化に合わせて、法令・制度も大きく見直されています。

2026年4月1日には、改正マンション管理適正化法が施行されましたが、今回の改正では、管理業者が管理組合の管理者を兼ねる場合において、自己取引等を行う際には、取引相手や取引内容などについて区分所有者への事前説明を行うことが義務化されています。
背景にあるのは、管理者と管理業者が同一となることで生じ得る利益相反への対応です。

また、同じ2026年4月1日、国土交通省は「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」を改訂しました。そこでは、管理業者管理者方式を導入する際のプロセスだけでなく、利益相反取引への対応や通帳・印鑑等の保管体制など、実際の運営に関わるルールが改めて整理されています。

さらに、制度の実務への落とし込みを目的として、「マンション標準管理者事務委託契約書」が新たに策定され、管理業者管理者方式に対応した「マンション標準管理委託契約書」や「マンション標準管理規約(書き換え表)」も整備されています。

これらの制度改正から見えてくるのは、管理業者管理者方式そのものを否定する方向ではなく、「管理を任せるのであれば、そのプロセスを確認し、説明できる仕組みも整える」という方向性です。


ここから先が、管理組合ごとのガバナンス設計です。

1.問題は「任せること」ではなく、チェック機能をどうするか

管理業者管理者方式について、「管理会社に任せて大丈夫なのか」という議論もありますが、管理会社に任せることそのものを問題と捉えてしまうと、本質を見失います。

考えるべきなのは、「誰が管理するか」ではなく、「その管理を誰が確認するのか」ということです。

理事会方式では、理事長・理事会そのものが日常的に管理会社から報告を受け、契約や工事、支出などを確認する役割も担っています。一方、管理業者管理者方式は、管理者へ広い範囲の権限を委ねて、それまで理事会が担っていたチェック機能の一部が弱くなる可能性があります。

誰が意思決定するのか。
誰が執行するのか。
誰がその執行をチェックするのか。

どの方式を選んでも、チェック体制が正しく機能することが重要です。

2.利益相反は「信用」ではなく「仕組み」で考える

管理会社が管理者になる場合、同じ会社が複数の立場を持つことがあります。

管理組合の「管理者」であり
日常管理を行う「管理業務の受託者」であり
場合によっては修繕工事等の「施工業者」でもある。

ここで考えておきたいのが「利益相反」です。

利益相反という言葉を聞くと、「管理会社が自社の利益を優先するのではないか」という話になりがちですが、本質は担当者や会社を信用できるかどうかではありません。

複数の役割を一つの会社が担えば、管理組合の利益と管理会社の利益が一致しない可能性のある場面が構造上生まれるということです。

利益相反が生まれる構造であれば、
 ・他社との比較は行われたか。
 ・なぜその会社を選んだのか。
 ・金額はどのように検討されたのか。
 ・誰が承認したのか。
 ・その経緯は区分所有者へ開示されているか。
こうしたプロセスが確認できることが重要になります。

管理会社による自社発注の排除を目指すのではなく、利益相反が生じ得ることを前提に、それでも適切な判断であったことを後から説明できる仕組みをつくる。
これが、yacneeが考える実務的なガバナンスです。

3.第三者の視点が「説明できる管理」をつくる

国土交通省が公表しているガイドラインでも、管理会社による利益相反のリスクに対応するため、適切な監督・チェック機能を確保することの重要性が示されています。
その選択肢の一つが、外部監事です。

外部監事は、独立した立場から、

・管理規約や総会決議に沿って運営されているか
・必要な手続きが適切に行われているか
・支出や契約に妥当性があるか
・必要な情報が適切に開示されているか

などを確認し、その結果を管理組合へ報告します。

ただし、yacneeでは外部監事を単なる「管理会社を監視する人」とは考えていません。

外部監事に求められるのは、「この工事は正しい・間違っている」と代わりに意思決定することではなく、「なぜその判断が行われたのか」を第三者の立場から検証できる状態をつくることです。

外部監事の目的は単に誤りを探すことではなく、説明可能なプロセスを確立することにあります。

・必要な比較検討が行われたか
・適切な承認を得ているか
・利害関係が適切に開示されているか
・判断の経緯が記録されているか

こうしたプロセスを確認できれば、管理組合の安心につながるだけでなく、適切に業務を遂行している管理会社にとっても、後から不要な疑念を持たれにくくなります

外部監事とは、管理会社と対立する存在ではなく、管理組合と管理会社の双方にとって、「説明できる管理」を実現するための第三者と捉えることができます。

4.監査は「一度見る」から「変化を追う」へ

監事というと、決算期に帳簿や決算書を確認し、通常総会前に監査報告書を作成するイメージを持つ方も多いでしょう。
もちろん、決算監査は重要です。しかし、管理者へ広い範囲の業務を任せるマンションでは、年に一度資料を見るだけでは、実際の管理状況を十分に確認できない場合があります。
例えば、漏水が発生したとします。
漏水が発生した ⇒ 原因を調査した ⇒ 補修工事を実施した
従来型の監査であれば、ここまでの資料を確認して終了するかもしれません。

しかし本当に確認したいのは、
 ・補修後に再発していないか。
 ・費用処理は適切だったか。
 ・同様の問題が他の箇所にないか。
という、その後の「変化」です。

前月の指摘事項を翌月に再確認することで、監査を単発で終わらせない運用が重要になります。
yacneeの外部監事では、月次収支や予算管理、点検・修繕工事、滞納管理、利益相反取引など、管理状況を継続的に確認できる監査項目を設けています。

これからの監査は、「その時点で正しかったか」を見るだけではなく、「その後どうなったか」を追う。
そんな役割がより重要になると考えています。

5.指摘して終わらない。「改善されたか」まで確認する

監査では、問題を見つけることそのものが目的になってしまうことがあります。
しかし、「資料が提出されていません」「この手続きには問題があります」と指摘するだけでは、管理状態は変わりません。

本当に重要なのは、
 ・何が問題だったのか。
 ・どのような影響があるのか。
 ・誰が対応するのか。
 ・いつまでに改善するのか。
 ・次回、何を確認するのか。
まで明確にすることです。

監査の成果を「何件指摘したか」で測るのではなく、「問題が適切に改善されたか」で考えることが重要です。
管理組合に必要なのは、指摘事項の多い監査報告書ではありません。管理状態が少しずつ良くなっていく監査と考えます。

6.実際の事故から見える「チェック機能」の重要性

マンション管理では、管理組合の資金管理をめぐる不正や事故も現実に発生しています。
2026年8月のマンション管理新聞では、管理会社が複数の管理組合で決算期に資金回しを行い、また、通帳コピーや残高証明書を偽造するなどして、決算期に残高を調整して横領を隠蔽していた事例が報じられました。

こうした事例からも、監査では決算書や期末残高が合っているかを見るだけではなく、その資金がどのように動いていたのかまで確認することが重要だと分かりますが、
yacneeの外部監事では、管理組合口座の入出金記録を確認し、特に期初・期末付近に、残高を合わせるような多額の取引や異常性のある取引がないかを重要なチェックポイントの一つとしています。

外部監事に求められるのは、数字が合っていることを確認するだけではなく、管理組合の財産が適切に管理されていることを第三者の立場から確認し、「説明できる状態」にすることです。

外部管理者方式のマンション管理組合へ|yacnee監事・印鑑保管代行

★まとめ★

マンション管理の担い手は、今後さらに多様になっていくと考えられます。
理事会が中心となるマンションもあれば、外部専門家が管理者になるマンション、管理会社が管理者になるマンションもあるでしょう。
重要なのは、どの方式が正解かということではありません。どの管理方式を選んでも、意思決定・執行・チェックの役割が整理され、重要な判断について後から説明できる状態になっていることです。

 ・利益相反の可能性がある取引は適切な手続きを経る。(事前説明会の開催等)
 ・利害関係や判断根拠を開示する。
 ・意思決定の経緯を記録する。
 ・問題があれば、改善されるまで確認する。
こうした仕組みがあってこそ、管理を外部へ安心して任せることができます。

管理を任せても、管理組合が状況を確認でき、区分所有者に説明できる仕組みを残しておくこと。
これからのマンション管理に必要なのは、「任せる管理」と「確かなチェック機能」をセットで設計することだと考えています。
そして、その先にあるのは単なる監視ではなく説明できる管理がマンションの資産と信頼を守る、これがこれからのマンション管理に求められるガバナンスではないでしょうか。

yacneeマンション管理士