修繕積立金を普通預金に置いたままでいい?
「すまい・る債」年平均2%台・「個人向け国債プラス」管理組合の資金運用を考える

マンション管理組合が保有する修繕積立金は、将来の大規模修繕や設備更新に備えるための大切な資金です。
安全性を重視し、普通預金や定期預金で保管している管理組合も多いでしょう。しかし、修繕工事費が上昇するなか、預金口座に置いておくだけでは、将来必要となる工事費に追いつかない可能性もあります。
こうしたなか、2026年度の「マンションすまい・る債」は、10年満期時の年平均利率が税引前2%台となりました。
さらに、これまで個人しか購入できなかった個人向け国債についても、2027年1月発行分から、マンション管理組合などが購入できる「個人向け国債プラス」へ変更される予定です。
管理組合の資金運用は、普通預金か定期預金かという選択だけではなくなりつつあります。
2026年度「マンションすまい・る債」は年平均2%台へ
「マンションすまい・る債」は、住宅金融支援機構が、管理組合による修繕積立金の計画的な積立てを支援するために発行している利付10年債券です。
2026年度発行分の10年満期時年平均利率は、次のようになっています。
| 商品 | 対象 | 10年満期時年平均利率・税引前 |
|---|---|---|
| マンションすまい・る債 | 一定の応募要件を満たす管理組合 | 2.000% |
| ステップアップすまい・る債 | 管理評価で一定以上の評価を取得したマンション | 2.050% |
| 認定すまい・る債 | 管理計画認定を取得したマンション | 2.100% |
ステップアップすまい・る債は、マンション管理適正評価制度で「★4つ以上」、またはマンション管理適正化診断サービスで「S評価」を取得したマンションが対象です。認定すまい・る債は、地方公共団体による管理計画認定を取得したマンションが対象となります。
ここで注意したいのは、「毎年一律で2%の利息が付く」という意味ではないことです。
公表されている2.000%、2.050%、2.100%は、2026年度発行債券について、10年間に受け取る税引前利息の総額を10年で平均した利率です。1年目から10年目までの各年の利率は異なります。
すまい・る債の基本的な仕組み
すまい・る債は、1口50万円から購入できます。
同じ口数で、毎年1回、最大10回まで継続して購入することが可能です。利息は満期まで毎年1回支払われ、購入した各債券は、それぞれの発行時期から10年後に満期を迎えます。
購入できる金額には上限があります。原則として、マンション全体の1年分の修繕積立金額に、前年度決算時点の修繕積立金会計残高を加えた範囲内です。
また、すまい・る債を保有する管理組合には、住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資について、借入金利の引下げや保証料の割引といった特典もあります。

2027年から「個人向け国債プラス」も選択肢に
管理組合の資金運用をさらに変える可能性があるのが、「個人向け国債プラス」です。
財務省は、これまで個人に限定していた個人向け国債の販売対象を、一部の法人や団体へ拡大します。
令和8年12月募集分、令和9年1月発行分から対象を拡大し、商品名を「個人向け国債プラス」へ変更する予定です。販売対象の具体例として、財務省は管理組合法人だけでなく、法人格を持たないマンション管理組合も挙げています。
商品には、次の3種類があります。
- 変動10年
- 固定5年
- 固定3年
最低購入額は1万円で、1万円単位、購入上限はありません。毎月発行される予定で、商品の基本的な仕組みは、従来の個人向け国債から変わりません。
実際の金利は、購入する月の国債市場の金利をもとに決まるため、すまい・る債の2%台と単純に比較することはできません。
「元本を確保できる」と「損をしない」は少し違う
個人向け国債プラスは、発行から1年経過すれば、国による買取りで中途換金できます。
中途換金時の償還金額は額面100円につき100円ですが、直前2回分の各利子に相当する金額が差し引かれます。
つまり、市場金利の変動によって債券価格が下がり、元本が大きく目減りする仕組みではありませんが、早期に換金した場合には、受け取った利息の一部を返す形になります。
「途中で換金できる」=「短期間でも予定どおりの利息を受け取れる」
ではありません。
修繕予定と運用期間を合わせることが重要です。

大規模修繕が早まった場合、中途換金できる?
修繕積立金の運用で最も重要なのは、利率だけではありません。
予定より早く大規模修繕が必要になった場合に、資金を取り出せるかどうかも確認しなければなりません。
すまい・る債は、初回債券発行日から1年以上経過すれば、修繕工事などのために、1口50万円単位で中途換金できます。中途換金手数料は不要で、購入元本に所定の利息を加えた金額が支払われます。
一方、発行から1年間は原則として中途換金できません。
そのため、近いうちに使用する予定の資金まで、すまい・る債へ振り向けることは避ける必要があります。
「中途換金できる」ことと、「いつでも自由に使える」ことは同じではありません。

普通預金・定期預金・すまい・る債・国債プラスを比較
| 比較項目 | 普通預金 | 定期預金 | すまい・る債 | 個人向け国債 プラス |
|---|---|---|---|---|
| 主な利用目的 | すぐ使う資金 | 短期・中期の運用 | 修繕積立金の計画的な長期運用 | 3年・5年・10年の運用 |
| 資金の引出し | 原則いつでも可能 | 中途解約可能だが適用利率が下がる場合あり | 発行後1年以上で中途換金可能 | 発行後1年以上で中途換金可能 |
| 購入単位 | 金融機関による | 金融機関による | 1口50万円 | 1万円から1万円単位 |
| 運用期間 | 制限なし | 商品による | 10年 | 3年・5年・10年 |
| 利率 | 金融機関による | 金融機関による | 2026年度は年平均2.000~2.100% | 発行月・商品により変動 |
| 主な注意点 | 高い流動性と引換えに利回りを確認 | 中途解約条件を確認 | 発行後1年間の資金拘束 | 中途換金時に利子相当額を控除 |
普通預金や定期預金のうち、利息の付く一般預金等は、金融機関が破綻した場合、1金融機関ごとに預金者1人当たり元本1,000万円までと、その利息等が預金保険で保護されます。
修繕積立金が1,000万円を大きく超える場合には、複数の金融機関へ分散することや、利息の付かない決済用預金、債券などを組み合わせることも検討課題になります。
すべての修繕積立金を投じてよいのか
利率が高いからといって、保有する修繕積立金のすべてを、すまい・る債や国債プラスへ振り向けるべきではありません。
すべての資金を、発行後1年間換金できない商品へ振り向けると、緊急時に支払いができなくなるおそれがあります。
重要なのは、修繕積立金を使用時期によって分けることです。
すぐに使う可能性がある資金
普通預金や決済用預金など、流動性を最優先します。
1~3年以内に使用する予定の資金
定期預金などを中心に、解約条件や満期を工事予定と合わせます。
数年間使用する予定がない資金
すまい・る債や、今後購入可能となる個人向け国債プラスを検討します。
これは一例であり、適切な配分は、建物の状態、次回工事の時期、修繕積立金残高、毎月の積立額によって異なります。
「利率が高い商品」を探す前に長期修繕計画を確認する
修繕積立金の運用期間は、金融商品の都合で決めるものではありません。
まず確認すべきなのは、長期修繕計画です。
- 次の大規模修繕はいつか
- 給排水管やエレベーターの更新時期はいつか
- 工事費の見直しは行われているか
- 修繕積立金はいくら不足する可能性があるか
- 今後5年、10年の資金収支はどうなるか
これらを把握したうえで、資金を使用する時期に合わせて、普通預金、定期預金、すまい・る債、国債プラスなどを組み合わせます。
運用商品を先に選ぶのではなく、
長期修繕計画から逆算して商品を選ぶ。
これが管理組合の資金運用における基本です。

★まとめ★
2026年度のマンションすまい・る債は、10年満期時の年平均利率が税引前2%台となり、応募する管理組合が前年を大きく上回っています。
さらに2027年1月発行分からは、マンション管理組合も「個人向け国債プラス」を購入できる予定です。
管理組合の資金運用は、
- 普通預金だけに置く
- 一つの商品へ全額を移す
という二択ではありません。
すぐに使う資金は普通預金へ。
数年間使わない資金は定期預金へ。
長期間使わない資金は、すまい・る債や国債プラスも検討する。
大切なのは、金利の高さだけではなく、安全性、換金性、満期、修繕計画を総合的に判断することです。
「国債だから安心」「年平均2%だから有利」と商品名や利率だけで判断せず、管理規約、長期修繕計画、資金収支、緊急時の支払能力を踏まえて、管理組合に合った運用方法を選びましょう。
yacneeマンション管理士