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専門家レポート

expert report

改正個人情報保護法をマンション目線で読み解く

マンション管理組合にどのような影響がある?

2026年7月10日、個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律が国会で成立しました。

「個人情報保護法の改正」と聞くと、大手IT企業や大量の顧客情報を扱う会社だけの問題と思われるかもしれません。

しかし、マンション管理組合も、区分所有者名簿、居住者名簿、緊急連絡先、口座情報、防犯カメラ映像など、多くの個人情報を日常的に取り扱っています。

今回の改正は、マンション管理の現場にも無関係ではありません。特に、顔認証設備、クラウドシステム、AI等を利用している・これから導入を検討しているマンションでは、今後の対応を検討する必要があります。

管理組合も個人情報保護法の対象になる

個人情報保護法は、営利企業だけを対象とする法律ではありません。

マンション管理組合についても、区分所有者名簿や居住者名簿などを、氏名等によって検索できる形で管理している場合には、原則として「個人情報取扱事業者」に該当します。

管理組合が一般的に取り扱っている情報には、次のようなものがあります。

  • 区分所有者の氏名、住所、電話番号
  • 居住者名簿
  • 緊急連絡先
  • 管理費等の口座振替情報
  • 管理費等の滞納情報
  • 総会・理事会の議事録
  • 駐車場や駐輪場の契約者情報
  • 防犯カメラ映像
  • 防災・避難支援に関する情報

今回の改正で注目すべきポイント

改正法は、データの利活用を進める一方で、顔特徴データなど、本人の権利利益を侵害するリスクが高い情報の保護を強化する内容です。

また、悪質な違反に対する課徴金制度の導入など、個人情報保護委員会による監督の実効性も強化されます。

マンション管理の実務では、特に次の5点が重要です。

1.顔認証オートロックへの対応

今回の改正で、マンション管理に最も直接的な影響が考えられるのが、顔認証オートロックや顔識別機能付き防犯カメラです。

近年では、居住者の顔を登録し、エントランスのカメラに顔を向けるだけで解錠できるマンションが増えています。

こうしたシステムでは、単に顔の画像を撮影するだけではなく、顔の形状や各部位の位置関係などを数値化した「顔特徴データ」が使用されることがあります。

顔特徴データは、パスワードのように簡単に変更できません。一度漏えいすると、その影響が長期間に及ぶ可能性があります。

改正法では、身体の一部の特徴に関する一定の個人情報について、取扱事業者や利用目的などの周知を求めるとともに、一定の場合には、違法な取扱いが確認されていなくても本人が利用停止等を請求できる仕組みが設けられます。

顔認証設備を導入しているマンションでは、少なくとも次の点を確認する必要があります。

  • 顔画像と顔特徴データのどちらを保存しているか
  • データを保存している場所はどこか
  • 管理組合、管理会社、システム会社のうち、誰が情報を管理しているか
  • 退去者や売却者のデータをいつ削除するか
  • 利用停止や削除の申出を誰が受け付けるか
  • 顔認証を利用しない居住者に、鍵やカードなどの代替手段を用意しているか
  • 顔認証を利用していることや利用目的を、居住者に適切に周知しているか

なお、通常の録画型防犯カメラが、直ちにすべて今回の顔特徴データに関する規制の対象になるわけではありません。

カメラ映像から顔の特徴を抽出し、登録された人物との照合や特定人物の追跡などを行っているかが、重要な判断要素になります。

2.子どもの個人情報

改正法では、16歳未満の子どもの個人情報を取り扱う際の保護も強化されます。

マンション管理では、例えば次のような場面が関係します。

  • 子どもの顔認証登録
  • 居住者名簿への氏名・生年月日の記載
  • 防災・安否確認システムへの登録
  • キッズルームの利用者登録
  • マンション内イベントの写真や動画の掲載
  • 居住者向けアプリのアカウント作成
  • 子どもを対象としたアンケートの実施

一般的な組合員名簿や居住者名簿の管理が、今回の改正によって直ちに大きく変わるとは限りません。

一方、子ども本人から直接個人情報を取得するサービスや、子どもの顔データを登録するシステムについては、法定代理人への説明や同意取得の方法を確認する必要があります。

管理組合や管理会社は、「保護者が当然知っているはず」と考えるのではなく、誰に、どのような説明を行い、どのような形で同意を得たのかを記録しておくことが重要です。

3.防災名簿・要支援者情報

マンションでは、災害発生時の避難支援を目的として、高齢者、障害のある人、要介護者などの情報を管理している場合があります。

病歴、障害、健康状態、要介護状態などの情報は、内容によっては「要配慮個人情報」に該当します。

要配慮個人情報は、不当な差別や偏見などにつながる可能性があるため、通常の個人情報よりも慎重な取扱いが求められます。

今回の改正では、生命・身体・財産の保護、公衆衛生などの目的で個人情報を取り扱う場合のルールも見直されます。

ただし、これは「防災目的であれば、本人に無断で自由に情報を集めてよい」という意味ではありません。

平常時に防災名簿や避難支援名簿を作成する際には、引き続き次のような運用が望まれます。

  • 利用目的を明確に説明する
  • 本人の意思を確認して登録する
  • 必要最小限の情報だけを収集する
  • 閲覧できる役員や担当者を限定する
  • 保管場所と持ち出しルールを決める
  • 役員交代時の引継ぎ方法を定める
  • 不要になった情報を削除する

防災のために必要な情報であるからこそ、漏えいや目的外利用が起きない仕組みが必要です。

管理組合が今から確認すべき7項目

改正法は、成立した時点ですべてのルールが直ちに適用されるわけではありません。

原則的な施行日は、公布の日から2年を超えない範囲で政令により定められる予定です。今後、個人情報保護委員会規則やガイドラインによって、具体的な取扱方法が示されます。

施行までの間に、管理組合は次の7項目を確認しておくとよいでしょう。

1.保有する個人情報を洗い出す

紙、パソコン、メール、クラウド、USBメモリー、管理会社のシステムなど、保管場所を含めて整理します。

2.利用目的を確認する

取得時に説明した目的と、現在の利用方法が一致しているかを確認します。

3.閲覧権限を整理する

理事長、理事、監事、管理会社、管理員など、誰がどの情報を閲覧できるのかを明確にします。

4.委託先・再委託先を確認する

管理会社だけでなく、その先のクラウド会社、コールセンター、印刷会社なども確認します。

5.顔認証・防犯カメラの仕様を確認する

録画だけなのか、顔特徴データを作成しているのかを設備会社に確認します。

6.保存期間と削除方法を決める

退去者、元区分所有者、元役員などの情報を、いつまで保存し、誰が削除するかを決めます。

7.事故発生時の連絡体制を決める

名簿の紛失、メールの誤送信、不正アクセスなどが起きた場合に、誰が管理会社へ連絡し、誰が個人情報保護委員会への報告要否を判断するのかを整理します。

★まとめ★

今回成立した改正個人情報保護法は、マンション管理組合にも関係があります。

もっとも、現時点ですぐに設備を変更したり、すべての規程を改定したりする必要があるわけではありません。

今後公表される政令、個人情報保護委員会規則、ガイドラインを確認しながら、まずは管理組合が保有する個人情報と委託先を把握することが第一歩です。

「管理会社に預けているから大丈夫」ではなく、管理組合自身が、どの情報を、誰に、何の目的で預けているのかを説明できる状態にしておくことが求められます。

マンション管理のDX推進に伴い、利便性と個人情報保護を両立させる仕組みづくりを心掛けていきましょう。

※本記事は2026年7月10日時点の公表資料をもとに作成しています。具体的な適用関係については、今後公表される政令、個人情報保護委員会規則、ガイドライン等をご確認ください。

yacneeマンション管理士